朝、目覚めても「脳のエンジン」がかからないあなたへ
「AmbiLabo」のAmbiです。
目が覚めても体が鉛のように重くて動かない。頭の中は深い霧がかかったようで何も考えられない。気づけばベッドの中でスマホを眺めて30分が過ぎている…。
ADHDの僕らの脳は、常に限界で走る一台の「F1マシン」のようなものです。最高の性能を秘めていますがそのエンジンは極めて繊細です。
だからこそ僕らには、毎朝、レース前のピットクルーのように決まりきった手順で、脳のエンジンを最高の状態に調整してあげるルーティンが必要なのです。
この記事では、ADHDの脳がなぜ朝に弱いのか、その科学的な理由を解説します。そして僕が毎朝、自分の脳というF1エンジンを、最高の状態にチューニングするために実践している具体的なモーニングルーティンを公開します。
【Labo】なぜADHDの脳には「朝の儀式」が必要なのか?
1. 「寝ている司令塔」を起こすため
ADHDの脳は、朝、理性を司る「前頭前野(司令塔)」がまだ深く眠っています。だから、「何をすべきか」をいちいち判断することが極めて苦手です。朝のルーティンは、この「司令塔」を無理やり叩き起こすのではなく、決まりきった手順で自動操縦させるための戦略なのです。
2. 「覚醒ホルモン」のスイッチを入れるため
人間の体は、朝目覚めると「コルチゾール」という覚醒のためのホルモンを分泌します。このスイッチを、正しい時間にONにするために最も重要なのが「朝の光」です。起きてから30〜60分以内に、太陽の光を浴びることでコルチゾールの分泌が最適化され、体内時計が完璧にリセットされます。
3. 「やる気」の連鎖反応を起こすため
「ベッドを整える」「顔を洗う」「水を飲む」。こうした小さな簡単なタスクを、次々とクリアしていくことは、脳内に快感物質である「ドーパミン」を少量ずつ放出させます。この小さな成功体験の連鎖が、一日の「やる気」の、最初の、そして最も重要な点火プラグになるのです。
【Ambi】僕が実践するADHD脳のためのモーニングルーティン
僕が実際に毎日行っている具体的な手順です。
AM 7:00【起床 & ベッドメイク】 毎日同じ時間に起きます。そして、起きたらベッドを整えます。これが、良い一日を始めるための最も重要な儀式です。
【なぜ、これが効くのか?】これはただ部屋を綺麗にする以上の意味があります。心理学で「スモールウィン(小さな勝利)」と呼ばれるもので、起きてわずか1分で得られる「今日最初の成功体験」なのです。ADHDの脳は、達成感によって放出されるドーパミンを常に求めています。この小さな成功が、「自分はできる」という自己効力感を高め、その日一日の行動の勢いを生み出します。
いわば、一日のポジティブな連鎖反応を引き起こす、最初のドミノを倒す作業。面倒な義務ではなく、脳に「今日もいけるぞ!」とスイッチを入れるための、最も簡単で効果的な儀式と言えるでしょう。
AM 7:01【太陽光】 すぐにカーテンを開け、ベランダや窓際で10〜15分、太陽の光を浴びます。曇りの日でも効果はあります。これで体内時計をリセットし、覚醒ホルモンのスイッチを入れます。
【なぜ、これが効くのか?】 太陽の光が目の網膜に入ると、その信号が脳の奥にある体内時計の親玉「視交叉上核(しこうさじょうかく)」に届きます。すると、親玉は「朝だ!」と認識し、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌をストップさせ、代わりに覚醒ホルモンのコルチゾールや精神を安定させるセロトニンの分泌を促します。
ADHDの人はこの体内時計が乱れやすく、朝スッキリ起きられないことが多い。だからこそ、強制的に「今は朝だ!」と脳に教え込むこの習慣は、薬に頼らない天然の覚醒スイッチとして非常に重要なのです。
AM 7:15【水分補給】 コップ一杯の水を飲みます。睡眠中に失われた水分を体に補給します。
【なぜ、これが効くのか?】 人間の脳の約75%は水分です。寝ている間に失われた水分を補給しないと、脳は軽い脱水状態に陥り、研究によると、わずか1〜2%の水分不足でも集中力、注意力、ワーキングメモリといった実行機能が著しく低下することが分かっています。これらは、まさに僕らが常に課題と感じている部分ですよね。
朝一番の水は、寝起きの乾いた脳に潤いを与え、血流を促進し、脳のパフォーマンスを物理的に向上させるための、最も安価で強力な「脳の燃料」なのです。
AM 7:20【身支度】 歯を磨き、髭を剃り、顔を洗います。決まりきった手順で体を動かし、脳を少しずつ脳を覚醒させていきます。
【なぜ、これが効くのか?】 これは「意思決定の回数を減らす」という、極めて戦略的な意味を持ちます。ADHDの脳にとって、「意思決定」は多くの認知エネルギーを消費します。朝の「何をしようかな」という小さな迷いをゼロにすることが、日中の集中力や判断力を温存することに繋がるのです。
毎日決まりきった手順で身支度をすることは、このプロセスを完全に自動化し、貴重な認知エネルギーを温存するための工夫。朝の脳を省エネモードで動かすことで、本当に頭を使いたい仕事や勉強に、最大限のパフォーマンスを発揮できるようになります。
まとめ:朝を制する者が一日を制す
ADHDの僕らにとって、朝のルーティンは面倒な「義務」ではありません。 それは、混沌とした世界で僕らが自分自身を最高の状態に保つための、最も強力な「武器」なのです。
全てを真似する必要はありません。 まずは明日、一つだけ。「起きたらすぐにベッドを整える」。 そこから始めてみてください。 その小さな一歩が、あなたの全ての一日を変えるきっかけになるはずです。
【この記事を読む上での重要なお願い(免責事項)】
この記事で解説しているADHDの特性や、その活かし方に関する考察は、筆者自身の経験とリサーチに基づいたものであり、特定の生き方やキャリアを推奨するものではありません。
ADHDの特性の現れ方や、最適な環境は、一人ひとり全く異なります。この記事は、ご自身の特性を理解し、可能性を探るための一つの「視点」としてご活用ください。
また、この記事は医学的な診断や治療に代わるものではありません。ADHDの診断や治療、あるいは仕事や人間関係における深刻な悩みについては、必ず医師やカウンセラーなどの専門家にご相談ください。
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