【ADHDの人間関係】なぜ「深く関わると、信用を失う」のか?その正体と、信頼を再構築する3つの戦略

人間関係

親しくなるほど、人が離れていく気がするあなたへ

こんにちは、「AmbiLabo」のAmbiです。

最初は上手くいく。相手も自分に興味を持ってくれ会話も弾む。でも関係が深くなるにつれて、なぜか少しずつ歯車が狂い始める。小さな約束を忘れる。大事な話を覚えていない。衝動的に余計な一言を言ってしまう。

そして気づいた時には相手の信頼を失っている。 そんな苦しい経験はありませんか?

それはあなたの性格が悪いからではありません。それはADHDの脳の特性が引き起こす、避けがたい「パターン」なのかもしれません。

この記事では僕自身の痛い経験も踏まえながら、なぜ僕らが人間関係で信用を失いがちなのか、その具体的なメカニズムを解説します。そしてその苦しいパターンから抜け出し、大切な人との信頼を再構築するための3つの具体的な「戦略」を提案します。

【Labo】なぜ僕らの「信用」は、悪気なくすり減ってしまうのか?

僕らが無意識にやってしまう行動が、相手からは「不誠実」「無神経」と誤解される。この悲しいメカニズムを、脳のレベルまで掘り下げて見ていきましょう。

原因①:「今」の刺激が強すぎる脳(衝動性 ADHDの脳は、脳の前頭前野、特に衝動をコントロールする「ブレーキ」部分の働きが少し弱い傾向があります。そのため、その場の刺激や感情に思考がハイジャックされやすいのです。

相手を喜ばせたい、場を盛り上げたいという気持ち(今の刺激)が、未来の自分にできるかどうか(未来の現実)を冷静に考える力を上回ってしまう。だから安易に「今度やろう!」と約束し、後で「なんであんな約束を…」と後悔します。

また、特に親しい関係では「これを言ったら相手はどう思うか」という一瞬のフィルタリングをすっ飛ばして、思ったことをそのまま口に出してしまう。これも脳のブレーキが効きにくい特性の現れなのです。

原因②:「脳の付箋(ふせん)」が小さすぎる(ワーキングメモリの弱さ) ワーキングメモリはよく「脳の付箋(ふせん)」に例えられます。会話中、相手から受け取った大事な情報(記念日、頼まれごと、悩み事)を、一時的にペタッと貼っておく場所です。

僕らの脳はこの付箋が、人より少し小さかったり、粘着力が弱かったりします。だから、新しい情報が入ってきたり、他のことに気を取られた瞬間に、前に貼ったはずの大事な情報がポロっと剥がれ落ちてしまうのです。

これは長期記憶(昔の思い出など)とは全く別の機能。だから僕らは相手を大切に思っていても、その「大切」という感情と、「さっき話した内容を覚えておく」という作業が、脳内でうまく連携できません。相手からすれば、それが「自分への関心が薄い証拠」に見えてしまうのです。

原因③:世界が「今」か「今じゃないか」に見える(時間感覚の欠如) ADHDの特性の一つに「時間盲(タイム・ブラインドネス)」という感覚があります。これは、時間の経過をグラデーションとして捉えるのが苦手で、世界が「今すぐ」か「今じゃない、いつか」の二つにしか見えなくなりがち、という状態です。

少しわかりにくいかもしれないので説明すると、「30分後に出る」という計画を立てても、その30分という時間の「長さ」や「流れ」を体感しにくい。だから、出発の直前まで「まだ時間はある(=今じゃない)」と感じ、気づいた時にはもう間に合わない、ということが起こります。これは単なる計画性の問題ではなく、時間の感じ方そのものが違うことに起因しているのです。

【Ambi】信頼を「再構築」するための、3つの具体的な戦略

僕らは脳の特性を根性では変えられません。だから、賢い「戦略」と「仕組み」で、誠実な心を相手に届けましょう。

戦略①:自分の「トリセツ」を共有し、最高の味方になってもらう これはただ弱点を告白するのとは違います。相手を「自分の脳を一緒に攻略してくれる最高のパートナー」にするための交渉です。

  • いつ話すか?:何か失敗した後ではなく、お互いがリラックスしている穏やかな時に。「ちょっと僕の特性について、大事な話があるんだけど」と切り出します。
  • どう話すか?:「ごめん、自分はADHDの特性で、今話した内容を記憶しておくことが苦手で、大事なことでもポロッと忘れちゃうことがある。でも、それはあなたを軽んじているわけでは絶対にない。むしろ、大切だからこそ、もし忘れてたら遠慮なく『あれどうなった?』って聞き直してほしい。それが自分にとって助けになるんだ
  • ポイント:ただ謝るのではなく、「どうしてほしいか」という具体的な協力のお願いまで伝えること。これにより、相手は「責める側」ではなく「助ける側」の当事者になれます。

「でも伝えるのが怖い」という方。その気持ちとてもよく分かります。それを乗り越えるための心の在り方を書きました。→記事はこちら

戦略②:「脳の外付けハードディスク」を構築する 自分の脳の記憶力を信用しません。約束、タスク、記念日、相手の好きなもの、話していたこと…その全てを脳の外、つまり外部の記憶装置に記録します。

  • 約束の瞬間、その場で入力:相手の目の前でスマホに入力します。これは「あなたの約束を本気で大事にしています」というメッセージになります。
  • 具体的なツール
    • Googleカレンダー:記念日や約束を「年単位の繰り返し」で設定。通知は1週間前、3日前、前日など複数回鳴らします。
    • リマインダーアプリ(Todoistなど):「〇〇さんに電話する」などのタスクを場所や時間と紐づけて通知。
    • 音声アシスタント:「Siri、明日の19時に〇〇とリマインドして」と、思いついた瞬間に声を吹き込みます。
  • 仕組み化:毎週日曜の夜に5分だけ、カレンダーとリマインダーを見返す「関係性レビュー」の時間を作ります。

戦略③:「0.5秒の思考フィルター」を身につける 衝動的な言葉の前に「間」を作る、具体的なトレーニングです。これはDBT(弁証法的行動療法)のSTOPスキルとしても知られています。

  • S (Stop):まず、止まる。言葉が口から出そうになったら、物理的に口を閉じます。
  • T (Take a step back):一歩引く。心の中で、自分と相手を少し離れた場所から見るイメージ。
  • O (Observe):観察する。自分は何を言おうとしている?なぜ?相手の今の表情は?これを言ったらどうなる?
  • P (Proceed mindfully):よく考えてから、進む。本当に伝えるべき言葉を選んで、初めて口を開きます。

最初は難しいかもしれません。まずは「あっ、今衝動的に言いそうになった」と気づくだけでも100点満点。この「気づく」回数が増えるほど、実際に止められる確率も上がっていきます。

まとめ:僕らは「誠実」でありたいだけなのだ

僕らが人間関係で失敗するのは、僕らが不誠実だからではありません。脳の特性が僕らの「誠実でありたい」という気持ちの邪魔をするだけなのです。

だから自分を責めないでください。 根性ではなく賢い「戦略」と「仕組み」で、あなたのその誠実な心を大切な人に届ける。 この記事がそのための最初の一歩になれば嬉しいです。

紹介した戦略は、あなたの弱さを隠すためのものではありません。あなたの持つ誠実さや優しさを、脳の特性という霧を乗り越えて、大切な人にまっすぐ届けるための「橋」を架ける作業です。


この記事を読む上での重要なお願い(免責事項)

この記事で解説しているADHDの特性や、その活かし方に関する考察は、筆者自身の経験とリサーチに基づいたものであり、特定の生き方やキャリアを推奨するものではありません。

ADHDの特性の現れ方や、最適な環境は、一人ひとり全く異なります。この記事は、ご自身の特性を理解し、可能性を探るための一つの「視点」としてご活用ください。

また、この記事は医学的な診断や治療に代わるものではありません。ADHDの診断や治療、あるいは仕事や人間関係における深刻な悩みについては、必ず医師やカウンセラーなどの専門家にご相談ください。

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