ADHDは「雑談」が苦手?当事者が教える「何を話していいか分からない」の脳科学的対処法

カフェでの友達との会話人間関係

どうも、AmbiLaboのAmbiです。

「エレベーターの中の、あの気まずい沈黙が死ぬほど苦手だ」 「『最近どう?』って聞かれても、『(え、”最近”っていつから?何について?仕事?プライベート?え、何が聞きたいんだ…?具体的に聞いてくれ…)』と脳内がフリーズする」 「美容師さんとの『何か話さなきゃ…』というプレッシャーで、1時間ずっと緊張してる」 「気づいたら、相手が全く興味ない自分の好きな話を一方的に10分もしてしまい、相手が『はえ??』となっていた」

こんな経験、ありませんか?

それ、あなたの「コミュニケーション能力」が低いんじゃないんです。 ADHDの「脳の特性」が、目的もゴールもない、曖昧な「雑談」と、相性が最悪なだけかもしれません。

この記事では、当事者である僕が、なぜADHDが雑談を苦手とするのか、その脳科学的な理由を深掘りし、明日から使える具体的な「対処法」を徹底的に解説します。


【Labo】なぜADHDは「雑談」が超苦手なのか?

「雑談くらい、適当にやればいいじゃん」 そう言われても、その「適当」が、僕らにとっては超高難易度。 それには、根性じゃない、脳科学的な3つの「深刻なミスマッチ」があります。

理由①:「報酬系」が反応しない(興味が持てない)

ADHDの脳は、「ドーパミン(報酬)」が出る「興味のある(=新しい、刺激的な)」話が大好きです。

逆に、「今日の天気の話」「テレビで見た芸能ニュース」など、脳にとって「報酬ゼロ」で、しかも「白黒はっきりしない(=結論がない)」雑談が始まると、脳は即座にシャットダウンします。 これが「注意散漫」モードの正体。

相手は楽しそうに話していても、こちらの脳は「(この情報、処理する意味ある…?)」と判断し、意識は「(あ、今日の夕飯どうしよう)」という別の刺激にフォーカスしてしまうんです。

理由②:「実行機能」のバグ(「解決」の衝動)

脳の「司令塔(実行機能)」は、「今、この場で、どのレベルの話をすべきか(TPO)」や「相手の言葉の『裏』にある意図(文脈)」を判断するのが仕事です。

この機能がユニークな働きをすると、

  1. 文脈が読めない: 相手が「共感してほしい」だけなのに、衝動的に「いや、それは君のやり方が悪い」と、解決策を提示して怒らせる。
  2. TPOが読めない:衝動性」がブレーキより勝ち、「(あ、自分の趣味の話しよう!)」と、TPOを無視した自分語りを始めてしまう。

結果、「なんか話が通じない」「自分勝手な人」という誤解を生んでしまうんです。自分も言われたことあります。

理由③:「ワーキングメモリ」不足(話が追えない)

一見カンタンそうな「雑談」は、

  1. 相手の話Aを覚えて
  2. 相手の話Bを追加で覚えて
  3. 話AとBを脳内でつなげて処理し
  4. 適切な自分の返事を考える という、超高度な脳のマルチタスクです。

ワーキングメモリ(脳の作業机)が弱いと、相手の話の途中で完全に意識が飛び、脳のメモリがフリーズします。 相手が「…って、思うんだけど、どう思う?」と話を振ってきた時には、 「(やばい、最後の『どう思う?』しか聞こえなかった…何の話だっけ…?)」 と焦っているうちに、会話は終わってしまうんです。自分もよくあります。


【Ambi】「解決」より「共感」を。女性たちから学ぶ、雑談ハック術。

「雑談の達人」…特に「聞き上手」な女性たちのコミュニケーションを「分析」すると、僕ら(特にADHD脳)が即インストールすべき、最強の「型」が見えてきます。

それは、「解決策」を提示するのをやめ、「感情」にフォーカスすることです。

ハック①:「解決」の衝動を止め、「感情」をオウム返しする

僕らの脳は、相手が「昨日、仕事でミスしちゃって…」と話し始めると、衝動的に「(原因は?対策は?)じゃあ、こうすればいいじゃん!」と「解決」したくなります。 でも、相手は「解決」なんて求めていません。

相手が求めているのは「(あーあ、やっちゃった…)落ち込んだ」という「感情」の共有です。

だから、僕らがインストールすべき「型」はこれ。

  • 相手: 「昨日、仕事でミスしちゃって…(落ち込んだ)」
  • NG(解決): 「なんでミスしたの?次からチェックリスト作れば?」
  • OK(共感): 「うわ、マジか。それは落ち込むね…」

相手の「感情」を、そのまま「オウム返し」する。 たったこれだけで、相手は「(わかってくれた!)」とドーパミンが出て、勝手に話し続けてくれます。

ハック②:「何を話すか」を捨て、「最強の聞き手」の”型”に徹する

ハック①を実践するには、「自分が話す」という思考を完全に捨て、「最強の聞き手」という「役割」に徹するのが一番です。 そのための「型(=相槌)」が、有名な、モテる女の「さしすせそ」です。

  • すがですね!」
  • らなかったです!」
  • ごいですね!」
  • ンスいいですね!」
  • うなんですね!」(もう最強。これだけでもOK)

たとえモテる気がなくても、脳がフリーズしそうになったら、この「さしすせそ」を順番に言うだけでも相手は「話を聞いてくれる人だ」と満足します。 これは、脳のワーキングメモリを使わずに「雑談」というキャッチボールを成立させる、最強の「型」なんです。

ハック③:「質問」で、相手の「ドーパミン」に火をつける

「聞き手」に徹していても、どうしても自分のターンが来たら、安全な「質問」というカードを切ります。 ポイントは、相手の「ドーパミンが出る(好きな)話」に誘導すること。

  • 「(ハック①で感情がわかったら)それで、どうなったんですか?
  • 「(相手が詳しそうなら)〇〇について教えてもらえませんか?
  • 「(趣味の話なら)なんでそれにハマったんですか?

「自分の話」をするのではなく、「相手が気持ちよく話せる『お膳立て』」に徹する。 これが、ADHDの衝動的な自分語りを抑え込み、相手の「信頼」を得る、最もクレバーな戦略です。

ハック④:「事前開示」と「物理的離脱」

最後の手段であり、最強の手段です。

  1. 「事前開示」でバリアを張る 仲良くなってきたら、先に「特性」を開示します。 「ごめん、俺、ADHD傾向あって、雑談苦手だからさ。もし意識飛んでたら『おい!』って突っ込んで!」 「興味ある話だと過集中で喋りすぎちゃうから、その時は止めておくれ」 と先に伝えておけば、相手も「そういう特性なんだ」と理解してくれます。
  2. 「物理的離脱」で脳をリセット どうしてもキツい飲み会、気まずい沈黙… そんな時は、「ごめん、ちょっと飲み物取ってくる」「すみません、お手洗いに」と、物理的にその場を離れましょう。 たった30秒でも、脳を強制リセット(クールダウン)できます。

まとめ:ADHDは「雑談」じゃなく「本質」と「共感」で勝負しよう

ADHDの「コミュニケーション」の強みは、自分の「好き」や「好奇心」が乗った時の、「本質的な会話」です。 でも、僕らの脳は、良かれと思って解決策を提示しがちです。

一方で、人間関係や雑談の多くは、「解決」ではなく「共感」で成り立っています。

もし、あなたの周りに「この人、話しやすいな」「聞き上手だな」と感じる人(多くの場合、それは女性のコミュニケーションにヒントが隠されています)がいたら、ぜひその人をお手本として分析してみてください。

その人は「解決」していますか? おそらく、「感情をオウム返し」したり、「上手な相槌」で相手のドーパミンを引き出しているはずです。

苦手な雑談は、その「共感」を「型」として使い、「60点」で乗り切る。 そして、あなたの強みである「本質」の会話で、信頼を築いていきましょう。

雑談が苦手な自分を責める必要なんて、1ミリもありません。


【この記事を読む上での重要なお願い(免責事項)】

この記事で解説しているADHDの特性や、その活かし方に関する考察は、筆者自身の経験とリサーチに基づいたものであり、特定の生き方やキャリアを推奨するものではありません。

ADHDの特性の現れ方や、最適な環境は、一人ひとり全く異なります。この記事は、ご自身の特性を理解し、可能性を探るための一つの「視点」としてご活用ください。

また、この記事は医学的な診断や治療に代わるものではありません。ADHDの診断や治療、あるいは仕事や人間関係における深刻な悩みについては、必ず医師やカウンセラーなどの専門家にご相談ください。


【この記事の信頼性について】

この記事は、筆者Ambi自身の当事者としての経験に加え、以下の専門機関の情報や学術的知見を(情報源・参考文献)として参照し、科学的根拠に基づいて執筆しています。

【情報源・参考文献】

  • Neuro Dive. ADHDのある人が説明が下手だと言われる理由は?原因と改善方法を解説. https://neuro-diversity.biz/blog/blog_250807.html
  • ディーキャリア. 大人の発達障害ADHD「失言」や「言葉がきつい」を理解し、克服する方法3選!!. https://dd-career.com/blog/kashiwa_20220324/
  • ハッピーテラス. 発達障害のある子どもは依存症になりやすい? 脳の特性との関係. https://happy-terrace.com/column_data/dependence/
  • 株式会社キズキ. ADHDのある人に役立つコミュニケーションのコツ 具体的な練習方法を紹介. https://kizuki-corp.com/kbc/column/adhd-communication/
  • asitano.jp. 人の話を聞かない原因は発達障害かも?ADHD・ASDの特徴と接し方. https://asitano.jp/article/7916
  • Neuro Dive. 発達障害(ASD、ADHD)のある人がマルチタスクへの苦手意識を払拭するには。脳科学からみた原因と対処法. https://neuro-diversity.biz/blog/blog_241115.html
  • asitano.jp. ワーキングメモリとは?鍛え方や低い人の特徴・改善方法. https://asitano.jp/article/8134
  • ダイレクトコミュニケーション. 傾聴力を高める③「感情のオウム返し」. https://www.direct-commu.com/chie/relation/keicho3/

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